通勤手当は毎月の給与から天引きされる社会保険料の計算に含まれるのに、所得税では非課税になる部分があるのはなぜでしょうか。
実は、通勤手当の扱いが社会保険と所得税で異なるのには、それぞれの制度の目的や性質の違いが関係しているのです。
この記事では、通勤手当と社会保険料の関係を丁寧に解説するとともに、所得税との取り扱いの違いについても分かりやすく説明します。さらに、企業の実務担当者が知っておくべき重要なポイントや、最新の制度動向なども紹介します。
通勤手当をめぐる疑問や不安を解消し、適切な実務対応に役立つヒントが満載です。ぜひ最後までお読みください。
>>千代田区 税理士
通勤手当と社会保険料の基本制度
通勤手当が社会保険料に含まれる理由
通勤手当は社会保険料の計算に含まれます。その理由として、政府は以下の点を挙げています:
通勤手当の支給は企業の任意であり、支給していない企業も存在するため、通勤手当を社会保険料の対象外とすると、支給していない企業の従業員との間で不公平が生じる可能性がある点。また、通勤手当を除外すると、社会保険料率の引き上げが必要になるおそれもあります。
つまり、通勤手当の支給状況によって従業員間の負担に差が出ないよう、また社会保険財政への影響を考慮して、通勤手当も社会保険料の計算に含めることとされているのです。
標準報酬月額の計算方法
社会保険料は、標準報酬月額を基に計算されます。この標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月までの3ヶ月間に支払われた報酬の平均額によって決定され、9月から翌年8月までの1年間の社会保険料計算に用いられます。
報酬には、基本給だけでなく通勤手当を含む諸手当も含まれます。ただし、残業代のように毎月の金額が大きく変動するものは、平均的な額で計算するなど、一定の調整が求められます。
報酬対象の範囲と基準
社会保険の対象となる報酬の範囲は、原則として労働者が労働の対価として受け取るすべてのものとされ、賃金、給料、手当、賞与などが該当します。
報酬に該当するかどうかは、支払いが労働の対償として行われるか、事業主から経常的かつ実質的に支払われるか、労働者の通常の生計の維持のために支払われるか、といった観点から判断されます。
社会保険料と所得税の取り扱いの違い
通勤手当の非課税限度額
所得税においては、通勤手当は一定の金額まで非課税扱いとなります。平成28年度の税制改正により、非課税限度額は以下のように定められています:
– 公共交通機関を利用する場合:月額15万円まで非課税
– 自家用車や自転車を利用する場合:通勤距離に応じて非課税限度額が設定されており、最大で月額31,600円
この非課税限度額は、通勤手当が給与所得ではなく、通勤のために通常必要な経費の概算分だと考えられているためです。非課税限度額を超える部分は、給与所得として課税の対象になります。
社会保険料の算定基準
一方、社会保険料の計算においては、通勤手当の全額が報酬に含まれ、保険料の対象となります。健康保険や厚生年金保険では、賃金、給料、手当など名称を問わず、労働の対価として受け取るものはすべて報酬とみなされるためです。
ただし、標準報酬月額には上限が設けられており、その最高等級の上限額を超える部分は、社会保険料の計算対象にはなりません。
税制上の処理方法
通勤手当を支給する際、所得税は毎月の給与計算で源泉徴収し納付しますが、社会保険料は標準報酬月額を基に計算し、原則として翌月末までに納付します。
従業員に非課税限度額を超える通勤手当を支給する場合、給与明細上はその超過分を課税対象として記載する一方、社会保険料は通勤手当の全額を含めて計算します。年末調整や法定調書の作成時には、こうした処理の確認が必要です。
実務上の計算と影響
通勤距離による変動
会社からの通勤距離や交通手段によって、従業員ごとの通勤手当の金額は大きく変わるため、同じ会社で働いていても、通勤手当の違いで標準報酬月額や社会保険料に差が生じます。その結果、給与の手取り額にも影響が出てきます。
会社としては、通勤手当の仕組みをきちんと説明し、従業員の理解を得ることが大切です。
手取り額への反映
社会保険料は労使で折半するため、標準報酬月額の上昇に伴い、従業員の負担する保険料も増え、給与の手取り額は減少します。
ただし、標準報酬月額は、将来受け取る年金額や傷病手当金の金額にも影響するため、負担増の一方でメリットもあるという点は伝えておく必要があります。
社員間の保険料格差
同じ会社の従業員でも、通勤手当の違いにより標準報酬月額や社会保険料に差が生じ、トータルの負担額が大きく異なるケースがあります。
一見不公平に見えますが、保険料負担増は手厚い社会保障を受けられることでもあるため、メリットも含めてきちんと説明することが求められます。
企業の実務対応ポイント
通勤手当の設定方針
通勤手当の金額設定は企業の裁量に任されているため、業種や職種、立地などを踏まえつつ、自社の実情に合った水準を定めることが求められます。
従業員の公平性を考慮し、通勤距離に応じた支給額の設定を行うことが望ましいでしょう。
計算時の注意事項
毎月の給与計算や社会保険料の算出において、通勤手当の扱いには細心の注意が必要です。所得税と社会保険で取り扱いが異なることを踏まえ、それぞれ適切に計算を行わなければなりません。
通勤手当の金額変更時は、社会保険の算定基礎届や月額変更届の提出など、期限内に手続きを行うことも重要です。
従業員への説明方法
通勤手当と所得税・社会保険料の関係について、従業員にきちんと説明することが大切です。なぜ課税対象になるのか、なぜ保険料が変わるのかといった疑問を持つ従業員は少なくありません。
制度の仕組みを分かりやすく説明し、定期的に情報提供を行いましょう。税制や社会保険制度の変更時などは特に丁寧な説明が欠かせません。
制度の動向と対策
最新の制度改正
通勤手当に関係する所得税や社会保険の制度は毎年のように変更が加えられるため、常に最新の改正動向に目を配り、実務への影響を把握しておくことが重要です。
企業の対応事例
通勤手当の運用では、他社の工夫を参考にすることも有益です。例えば、所得税の非課税限度額の範囲内で通勤手当を設定する企業や、在宅勤務の導入に伴い通勤手当の扱いを見直すケースが見られます。
自社に最適な制度設計を探るためにも、時代の変化を見据えつつ、柔軟な対応が求められます。
通勤手当と社会保険料の関係のまとめ
通勤手当は所得税と社会保険料で扱いが異なります。所得税では一定の非課税枠がありますが、社会保険料では全額が報酬に含まれ対象となります。この違いは、それぞれの制度の目的や性質が背景にあるためです。
企業の実務担当者は、通勤手当の金額設定や計算方法、従業員への説明など、適切な対応が求められます。また、制度改正の動向にも注意が必要でしょう。通勤手当をめぐる疑問を解消し、円滑な実務につなげていきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通勤手当と社会保険料 | 全額が報酬に含まれ対象 |
| 通勤手当と所得税 | 一定の非課税枠あり |
| 制度の違いの背景 | 目的や性質の違い |
| 企業の実務対応 | 金額設定、計算、説明など |
| 制度改正の動向 | 注意が必要 |

