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現金主義と発生主義は混在してるとNG?

現金主義と発生主義は混在してるとNG? コラム

経理担当者の皆さん、「発生主義」と「現金主義」の違いに悩んでいませんか?実務では混在させることは問題ないのでしょうか?

会社の経理を任されている者にとって、適切な会計処理方法を選択し実践することは重要な責務です。しかし、「発生主義」と「現金主義」の違いを正しく理解し、実務に適用するのは容易ではありません。取引の性質や企業の状況に応じて使い分ける必要があるからです。

特に、「発生主義」と「現金主義」を混在させることの是非については、経理担当者を悩ませる問題の一つでしょう。法人税法上は「発生主義」が原則とされる一方で、重要性の乏しい取引については「現金主義」が認められるなど、一概には判断できない面があるためです。

そこで本記事では、「発生主義」と「現金主義」の基本的な違いを解説した上で、実務における適切な使い分け方と、処理方法を変更する際の注意点について詳しく説明します。これを読めば、自社に最適な会計処理方法を選択し、自信を持って経理実務に取り組めるようになるでしょう。経理のプロを目指す皆さん、ぜひ最後までお付き合いください。

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「現金主義」と「発生主義」の基本と経理処理の仕方

「現金主義」「発生主義」の違いを明確に理解

「現金主義」と「発生主義」は、企業の経理処理において重要な概念です。この2つの会計処理方法の違いを正しく理解することが、適切な経理処理を行うための第一歩となります。

「現金主義」は、現金の収支があった時点で収益や費用を計上する方法です。つまり、商品やサービスの提供時期に関係なく、代金の受け取りや支払いが行われた時点で会計処理を行います。この方法は、現金の動きに基づいているため、キャッシュフローを重視する企業に適しています。

一方、「発生主義」は、収益や費用を、その発生した時点で認識する方法です。商品の販売やサービスの提供時点で、代金の受け取りや支払いが行われていなくても、収益や費用を計上します。この方法は、企業の財務状況をより正確に把握することができ、適切な経営判断を下すために有用です。

それぞれのメリットとデメリットを理解

「現金主義」と「発生主義」には、それぞれメリットとデメリットがあります。これらを理解することで、自社に適した会計処理方法を選択することができます。

「現金主義」のメリットは、簡便性と現金流入の把握の容易さです。現金の動きのみに着目するため、複雑な会計処理が不要で、経理担当者の負担が軽減されます。また、現金残高を常に把握できるため、資金繰りの管理がしやすいというメリットもあります。一方で、「現金主義」では、売掛金や買掛金などの債権債務を考慮しないため、企業の正確な財務状況を把握することが難しく、経営判断を誤るリスクがあります。また、期中の利益や損失を正確に把握できないため、適切な節税対策や資金繰りの計画が立てにくくなる可能性があります。

「発生主義」のメリットは、企業の財務状況を正確に把握できることです。収益と費用を発生時点で認識するため、債権債務を含めた企業の財務状況を適切に把握することができます。これにより、期間損益を適切に反映でき、経営判断の精度が向上し、適切な資金繰りや投資判断が可能となります。デメリットとしては、会計処理が複雑になり、経理担当者の負担が増えることが挙げられます。

具体例で経理処理を見てみよう

具体的な例を見ることで、「現金主義」と「発生主義」の違いをより深く理解することができます。

例えば、A社が3月に商品を販売し、代金10万円を4月に受け取ったとします。「現金主義」では、代金を受け取った4月に収益を計上します。一方、「発生主義」では、商品を販売した3月に収益を計上します。

次に、B社が4月に原材料を購入し、代金5万円を5月に支払ったとします。「現金主義」では、代金を支払った5月に費用を計上しますが、「発生主義」では、原材料を購入した4月に費用を計上します。

このように、「現金主義」と「発生主義」では、収益や費用の計上時期が異なります。「発生主義」を採用することで、収益と費用を対応させ、適切な期間損益を算出することができます。

経理の実務では「現金主義」と「発生主義」の混在はアリ?

法人税法上は「発生主義」で統一が原則

法人税法上、法人の益金や損金の認識基準は「発生主義」が原則とされています。そのため、法人が「現金主義」を採用することは基本的に認められていません。

「発生主義」で経理処理を行うことで、収益と費用を対応させ、正確な期間損益を算出することができます。これにより、企業の財務状況を適切に評価し、納税額を正確に算出することが可能となります。

法人税法は、企業会計原則に基づいて制定されています。企業会計原則では、「発生主義」が原則とされており、法人税法もこれに倣っています。そのため、企業は「発生主義」に基づいて経理処理を行うことが求められているのです。

小規模事業者向け「現金主義」の特例あり

ただし、個人事業主の場合、一定の要件を満たすことで「現金主義」による簡易な記帳方法が認められる場合があります。

特例の適用対象となるのは、次のような事業者です。

1. 前々年分あるいは前年分の事業所得が300万円以下であること
2. 棚卸資産を有していないこと
3. 前々年分の事業所得で減価償却費を必要経費に算入していないこと

これらの要件を満たす事業者は、「現金主義」による経理処理を選択することができます。ただし、特例の適用を受けるためには、所定の届出書を提出する必要があります。

特例の適用を受けることで、経理処理の事務負担を軽減することができますが、一方で、企業の財務状況を正確に把握することが難しくなるというデメリットもあります。事業者は、自社の状況を踏まえて、特例の適用を検討する必要があります。詳細については、税務署や専門家に相談することをおすすめします。

重要性の乏しい取引は「現金主義」でOK

「発生主義」が原則とされている一方で、重要性の乏しい取引については、「現金主義」による処理が認められています。

重要性の乏しい取引とは、企業の財務状況に与える影響が軽微な取引のことを指します。具体的には、次のような取引が該当します。

1. 少額の現金取引
2. 定期的に発生する少額の取引
3. 発生時と現金授受時のずれが短期間である取引

これらの取引については、「現金主義」で処理を行っても、企業の財務状況に与える影響は限定的であると考えられています。そのため、事務負担の軽減を目的として、「現金主義」による処理が認められているのです。

ただし、重要性の乏しい取引の範囲は、企業の規模や業種によって異なります。企業は、自社の状況を踏まえて、重要性の乏しい取引の範囲を適切に設定する必要があります。また、重要性の乏しい取引を「現金主義」で処理する場合でも、その旨を財務諸表の注記等で開示することが求められます。

「現金主義」と「発生主義」の上手な使い分け方

資金繰り重視なら「現金主義」

「現金主義」と「発生主義」は、それぞれメリットとデメリットがあるため、企業は自社の状況に応じて使い分ける必要があります。

資金繰りを重視する企業にとっては、「現金主義」が適しています。「現金主義」では、現金の収支に着目するため、現金残高を常に把握することができます。これにより、資金繰りの管理がしやすくなります。

特に、中小企業や新規事業を立ち上げた企業など、資金繰りが重要な経営課題となっている企業では、「現金主義」を採用することで、キャッシュフローを適切に管理することができます。「現金主義」を採用することで、現金残高の推移を把握し、必要な資金調達を適時に行うことができるようになります。

ただし、「現金主義」を採用する場合でも、売掛金や買掛金などの債権債務の管理を怠ってはいけません。債権債務の管理を適切に行わないと、資金繰りが悪化する可能性があります。「現金主義」を採用する企業は、債権債務の管理体制を整備する必要があります。

正確な期間損益には「発生主義」

一方、正確な期間損益を把握することを重視する企業では、「発生主義」が適しています。「発生主義」では、収益と費用を発生時点で認識するため、収益と費用を対応させて適切な期間損益を算出することができます。

「発生主義」を採用することで、企業の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すことができます。例えば、売上高や利益率の推移を正確に把握することができるため、事業の収益性を適切に評価することができます。

また、「発生主義」は、法人税法上の原則でもあります。「発生主義」を採用することで、適切な課税を受けることができ、税務リスクを回避することができます。

ただし、「発生主義」を採用する場合は、会計処理が複雑になるため、経理担当者の負担が増えることに注意が必要です。企業は、経理担当者の教育や会計システムの整備など、「発生主義」を適切に運用するための体制を整備する必要があります。

会計ソフトで効率的に処理

「現金主義」と「発生主義」のどちらを採用するにしても、会計処理を効率的に行うことが重要です。そのためには、会計ソフトの活用が有効です。

会計ソフトを活用することで、仕訳の入力や財務諸表の作成など、経理処理の作業を自動化することができます。これにより、経理担当者の負担を軽減し、経理処理の効率性を高めることができます。

特に、クラウド型の会計ソフトは、インターネット経由でいつでもどこからでも利用することができるため、経理処理の利便性が高まります。また、クラウド型の会計ソフトは、自動バックアップや自動アップデートなどの機能を備えているため、システムの管理コストを削減することができます。

会計ソフトを選定する際は、自社の規模や業種、経理処理の方針などを踏まえて、適切なソフトを選ぶ必要があります。また、会計ソフトの導入に際しては、経理担当者への教育や運用ルールの整備など、会計ソフトを適切に運用するための体制を整備することが重要です。

「現金主義」「発生主義」変更時の注意点

途中変更の申告と届出

企業が「現金主義」と「発生主義」を途中で変更する場合、一定の手続きが必要となります。

「現金主義」から「発生主義」に変更する場合、原則として、変更前事業年度の確定申告書に、変更後事業年度の所得金額を見積もった書類を添付する必要があります。これは、「現金主義」と「発生主義」では所得金額の計算方法が異なるため、変更前事業年度の所得金額を「発生主義」ベースで再計算する必要があるためです。

一方、「発生主義」から「現金主義」に変更する場合は、原則として、変更を希望する年の3月15日までに、所轄税務署長に「現金主義による所得の計算に関する届出書」を提出する必要があります。

会計処理方法の変更は、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。企業は、変更の理由や影響を十分に検討した上で、適切な手続きを行う必要があります。

「現金主義」から「発生主義」への変更処理

「現金主義」から「発生主義」に変更する場合、変更前事業年度の決算を「発生主義」ベースで修正する必要があります。

具体的には、次のような処理が必要となります。

1. 売掛金や買掛金など、「現金主義」では計上されていない債権債務を計上する
2. 前払費用や前受収益など、「現金主義」では計上されていない未収未払項目を計上する
3. 減価償却費など、「現金主義」では計上されていない非資金項目を計上する

これらの修正を行うことで、「発生主義」ベースの財務諸表を作成することができます。修正後の財務諸表は、変更後事業年度の期首残高として引き継がれます。

「現金主義」から「発生主義」への変更は、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。企業は、変更による影響を十分に検討し、適切な修正処理を行う必要があります。

税理士に相談して適切に対応

「現金主義」と「発生主義」の変更は、税務上の影響も大きいため、税理士に相談して適切に対応することが重要です。

税理士は、税法に関する専門家であり、会計処理方法の変更が税務に与える影響を適切に評価することができます。税理士に相談することで、変更による税務上のリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。

また、税理士は、会計処理方法の変更に必要な手続きについても、適切なアドバイスを提供することができます。変更の届出や申告など、必要な手続きを漏れなく行うことができるよう、税理士の助言を得ることが重要です。

さらに、税理士は、変更後の会計処理について、適切な運用方法をアドバイスすることができます。「発生主義」への変更後は、会計処理が複雑になるため、経理担当者への教育や会計システムの整備など、適切な運用体制を整備する必要があります。税理士の助言を得ることで、スムーズに新しい会計処理方法に移行することができます。

会計処理方法の変更は、企業の財務状況や税務に大きな影響を与える重要な意思決定です。企業は、税理士との連携を密にし、適切な対応を行うことが求められます。

以上のように、「現金主義」と「発生主義」はそれぞれ特徴があり、企業は自社の状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。また、方法を変更する際は、税務上の影響も考慮し、税理士に相談しながら適切に対応することが重要です。会計処理は企業経営の基礎となる重要な事項ですので、慎重に検討し、適切な方法を採用していきましょう。

「発生主義」と「現金主義」の違いと使い分けのまとめ

「発生主義」と「現金主義」は、それぞれ特徴があり、企業の状況に応じて使い分ける必要があります。「発生主義」は、正確な期間損益の把握に適していますが、会計処理が複雑になるデメリットがあります。一方、「現金主義」は、資金繰りの管理がしやすいメリットがありますが、企業の財務状況を正確に把握することが難しくなります。

法人税法上は、「発生主義」が原則とされていますが、重要性の乏しい取引については「現金主義」が認められています。そのため、実務では「発生主義」と「現金主義」が混在することもあるでしょう。大切なのは、自社の状況に応じて適切な方法を選択し、必要に応じて税理士に相談しながら、適切に対応することです。

会計処理は、企業経営の基礎となる重要な事項です。「発生主義」と「現金主義」の違いを正しく理解し、自社に最適な方法を採用することで、適切な経営判断を下すことができるでしょう。

項目 発生主義 現金主義
概要 取引発生時点で収益・費用を計上 現金の収支時点で収益・費用を計上
メリット 正確な期間損益の把握に適している 資金繰りの管理がしやすい
デメリット 会計処理が複雑になる 企業の財務状況を正確に把握しにくい
法人税法上の扱い 原則 重要性の乏しい取引で認められる
使い分け 正確な期間損益の把握を重視する企業に適している 資金繰りを重視する企業に適している
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